――本日はよろしくお願いします。
あぁ,よろしゅうな。
――では早速,武勇伝の方を。
なんぼかあるんやけどな,とっておきの聞かせたるわ。あれは高校の頃やったかな。学校の帰りにな,あ,普段はまっすぐ帰るねんけど,その日は買いたい漫画かCDかがあって,商店街に寄っとったんよ。
――商店街というと,杜箭ストリートガーデンでしょうか。
いや,あそこはわりかし最近できたとこやな。そこやのうて,もう潰れてしまった方や。杜箭みたいに綺麗でも,治安がいいわけでものうてな。一本道外れたらガラ悪い連中がたむろしとるなんてザラにあったんよ。ほんでな,店寄って目星のもの買って,テンション上がってもうたんやろな。近道や~いうて裏路地の方に入ってしもたんよ。
――となると,危ない方々が。
おぉ,おったんよ。明らかカタギやないのが5人くらい。おったんやけど,俺の方じゃなかってん。全員背中向けとってな,下の方見とったんよ。で,そいつらの身体ごしに白い服が見えたから,誰か倒れとんかなーって。背伸びして目線上げてみたら,ばっ,て眼があった。ちょい年下っぽい男の子な。泣いとんのが見えたんよ。
――なんと。
さすがにこらあかんわ思たね。いつもやったら誰か呼ぶとこやねんけど,頭が熱くなっとったんかな,「何しとんねん!」いうてタックルかましたったんよ。まぁ今思うとめっちゃしょぼいやつやったけどな。
――それは勇敢ですね。ご無事だったんですか?
それがな。そのガラ悪い奴ら,何の反応も無いんよ。こっち振り返りもせーへんと,ずぅっとその男の子の方見とんの。は?思て自分もそっち見てみたんよ。あらためて見ると,まぁめっっちゃ可愛いんよ。明らか男って分かる身体つきやねんけどな,肌とか真っ白やし,逆に髪の毛はめっちゃ綺麗な黒やし。あれなんていうんやっけ,カラスみたいに綺麗みたいな。
――濡羽色。
それやそれや。あと目もぱっちりしとって,まつ毛もなごうてな。涙で潤んでるのもあわさって,釘付けになるってこういうことか思たわ。手足もまぁすらっとしとるんよ。手錠でそばの配管に繋がれとったんやけど,きつう絞められとるから手首が赤らんでもて,でもそれも雅なんよなぁ。
――なるほど,それで?
あぁこれやったら先におった5人の気持ちも分かるわ思て,邪魔したん謝ってから自分もその輪に入ったんよ。いくら眺めてても飽きんくて,気付いたらヨダレ垂らしたり泣いたりしとったわ。ホンマにすごかったなぁ。ホンマやで?で,1時間くらいそうしとったらな,サラリーマンみたいな人が来たんよ。わぁわぁ怒鳴ったと思たら同じように眺めだして,あとはもうその繰り返しよ。途中からあんまし覚えてないけど,千人くらいおったんと違う?結果的に最前で眺められてよかったわ。
――大変興味深いですね。その男の子はどちらに?
あぁ,ついさっきまで眺めててんけどな,さすがにもう腐ってしもたわ。
6

インタビュイー
2025.05.26
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――本日はよろしくお願いします。 あぁ,よろしゅうな。 ――では早速,武勇伝の方を。
Published: 2025.05.26
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